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Melty Life

第1章 告白




 避難警報ベルの誤作動、及びスケジュール外の避難訓練開始に関して、生徒会は学校側から厳重注意が言い渡された。

 特に処分もなかったのは、校長や生徒指導部の顔触れを始め、気を良くしていた教員らが多かったからだ。大人も皆、バレンタインデーに浮かれている。普段は邪険に見られていても、ごますりの上手い生徒達からの献上品を本気にとって、自分達の価値を再確認して酔っていた。生徒らから感謝される自分達には、彼らの過失の一つや二つ、見逃してやる義務がある。





「まさか、宮瀬さんが衣川さんにお願いしたことだったなんてね」


 ことの終始を白状すると、水和は愉快な話でも聞いた様子で声を立てて笑った。


 茜色が下校道に注いでいる。住宅街の歩行路に、あかりと水和の伸びた影が並んでいた。


 一連の騒ぎによって、ほとんどの部活動が中止になった。もともと今日は、部員達も熱心に活動する気はなかった。チョコレートの交換会をしたいばかりに、普段通り顔を合わせていたに過ぎない。演劇部も稽古はそこそこにする予定だったらしく、水和は交換するものだけすみやかに交換してくると、避難時に危機を救ってくれた下級生に礼を言いたいと言って、早めに切り上げてきてくれたのだ。

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