
Melty Life
第1章 告白
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進学率の極めて高い、ここ、中高一貫校の私立淡海ヶ藤は、特化された部活動が存在しない。校風も他校に比べて保守的な色味が強い分、生徒もおとなしく、生真面目な性質が目立つ。
ただし部活動は一つ一つ蓋を開けていけば、地道にその分野を極めている団体が多く、中でも演劇部や軽音部は、特定の部員のファンを名乗る生徒が一定数いる。
あかりから見ても、演劇部は学生の趣味を超越したものがあるんじゃないか。
昨年の秋に引退した三年生だと、女子らの黄色い歓声を集めていた男役が二人ほどいたし(一人は女子で一人は男子)、学校には内緒でタレント事務所に入っているという噂のあった部員は、演技力もオーラも群を抜いていた。テレビで見かけるアイドルに混じっていても肯ける、良い意味であざとい存在感の強い部員もいた。
あかりが注目してきたのは、今現在、二年生の花崎水和(はなさきみわ)だ。
憂いを湛えたまるい目許に、たおやかに口角の上がった口許、人形師が丹念に化粧を施したような肌に、黒と青グレーのグラデーションカラーの巻き毛。普段はたどたどしく甘い声で話すのに、舞台に上がれば、彼女の声は凛と響く清冽な芯が通る。
彼女と親しい男役の少女も、一年生のクラス内では、焦がれている生徒の話をよく耳にする。
あかりは水和についての情報を集めていく内に、初恋に落ちていたのである。
