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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第16章 何度でも、君に恋をする



「……そんなに見つめないでよ、花音。可愛すぎて我慢ができなくなっちゃうよー」

私の顔を見てそんな事を言ったひぃくんは、ユラユラと揺れてとても嬉しそうに微笑む。

私は見つめているのではなく睨んでいるのだ。
そんな事ですら、もう今のひぃくんには伝わらないのだろうか……。

ダメだ……私ではやっぱり敵わないかもしれない……。

ニコニコと嬉しそうに微笑むひぃくんを見て、気持ちで負けてしまった私はヒクリと口元を痙攣《ひきつ》らせた。

そんな私達のやり取りを黙って見ていたお兄ちゃんは、突然ひぃくんの肩をガシッと掴んで後ろへ押し退けると口を開いた。

「響……それ以上花音に近づくな。……だいたい、俺がいつ結婚を認めたんだよ。勝手な事言うな」
「えー? 言ってたよ? さっき」
「言ってないだろ。一体どんな解釈したらそうなるんだよ……」

ニコニコと微笑むひぃくんを見て、お兄ちゃんは呆れたような顔をして小さく溜息を吐く。

「またまたー。……照れなくてもいいんだよ? ちゃんと解ってるから」

そう言って、フニャッと笑って小首を傾げたひぃくん。

「……お前は何にも解ってないよ。何で照れる必要があるんだよ……アホ」

目の前で呑気に微笑んでいるひぃくんを見て、お兄ちゃんは呆れた顔のまま溜息まじりにそう小さく呟いた。

「何だー? 翔。お前、照れてたのか? ……おかしな奴だなー、何でお前が照れる必要があるんだよ」

そう言って、ハハハッと豪快に笑うお父さん。

「だから、照れてないって。おかしいのはコイツだろ……」

ウンザリした顔でそう呟いたお兄ちゃんは、もはや戦意喪失気味に見える。

それもそうだ。
ひぃくんもお父さんも、全く話が通じないのだ。
こんな二人を相手に、どう対抗すれば良いというのか……。
私だってわからない。


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