
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第16章 何度でも、君に恋をする
お願いっ……お兄ちゃん、私を見捨てないで……っ。
この場で唯一頼れる存在だと思われるお兄ちゃんを見つめ、瞳を潤ませながら心の中で懇願する。
ソファに座って呆れながらこの光景を眺めていたお兄ちゃんは、そんな私を見て大きな溜息を吐くと口を開いた。
「……だから、からかうなって言ってるだろ。花音はすぐ騙されるんだから……」
ーーー!
お兄ちゃんっ……。
私を見捨てた訳じゃなかったのね……っ!
お兄ちゃんに見捨てられたと思っていた私は、目の前のお兄ちゃんを見て喜びに小さく身体を震わせる。
「……お兄ちゃんっ! 」
ガバッと立ち上がった私は、そのままお兄ちゃんへ向かって走り寄るとギュッと抱きついた。
「……っ私を見捨てた訳じゃなかったのねっ!? 良かった……っ 」
「……見捨てるって何だよ……」
泣きそうな顔をしながら喜ぶ私を見て、呆れながらも優しく抱きとめてくれたお兄ちゃん。
やっぱり、私の味方はお兄ちゃんだけだよ。
これからもずっとずっと、私の味方でいてね。
そんな事を思いながら、フフッと小さく微笑む。
そんな私をすぐ近くで見ていた彩奈は、クスッと小さな笑い声を漏らした。
「ーー花音」
ーーー!?
突然ヌッと私の顔を覗き込んできたひぃくんは、私と目を合わせると小首を傾げてフニャッと微笑んだ。
ビックリした……。
いきなりのドアップとか、心臓に悪いから辞めて欲しい。
目の前でニコニコと幸せそうに微笑むひぃくんを見て、何だか嫌な予感がしてきた私は無意識にお兄ちゃんの服をキュッと握りしめる。
怖いよひぃくん……。
何だか凄く怖い、その笑顔……。
「良かったねー。翔も賛成だって、俺達の結婚」
そう言って、私の目の前でニコッと笑ってみせたひぃくん。
この人は一体、何を言っているの……?
さっきのお兄ちゃんの言葉、本当にちゃんと聞いてたの?
……何をどう聞き間違えたらそんな解釈になるっていうのだ。
目の前にいるひぃくんを見つめ、私は思いっきり顔を痙攣《ひきつ》らせる。
まっ……負けないんだから……。
そう、今の私にはお兄ちゃんがついている。
ひぃくんになんて……絶対に負けないんだからっ!
そんな事を思った私は、気持ちを立て直すと目の前のひぃくんをキッと睨みつけた。
