
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第16章 何度でも、君に恋をする
「大好きだよ……。私、ひぃくんの事……大好きだもん……。不倫なんて……浮気なんて絶対にしないよ……っ」
まるで独り言のように小さな声でそう呟くと、ガクガクと揺れていた身体がピタリと止まった。
「……本当っ!? 」
キラキラと瞳を輝かせたひぃくんは、とても嬉しそうな顔をして私を見つめている。
またですか……忍法、涙隠しの術。
あんなに流していた涙は何処《いずこ》へ……?
目の前で嬉しそうに微笑むひぃくんを見て、目まぐるしく変わるその表情にヒクつく私。
「ーー良かったなぁ、響っ! 」
それまで黙って私達を見ていたお父さんは、そう言ってポンッとひぃくんの肩に手を乗せると嬉しそうに笑った。
「うんっ! 花音、結婚してくれるって! 」
「そうかー! 良かったなー! 」
……えっ!?
嬉しそうに話す二人を見て、焦った私は二人に向けて口を開いた。
「わ、私っ! 結婚するなんて言ってないよ!? 」
「何言ってるんだよ、花音。言ってたぞ? 結婚するって。……なぁ? 響」
「うんっ! 言った! 」
えっ?!
私、言った?! 言ったの?!
自分でも気付かない内に、無意識に言ってしまったの?!
パニックで混乱する私は、チラリとお母さん達に視線を向けてみる。
すると、私の視線に気付いたお母さん達はニコリと優しく微笑んだ。
えっ……。
その笑顔の意味は……?
やっぱり……私は言ってしまったの? 結婚するって……。
お母さん達のその笑顔に、益々混乱してしまった私は呆然と固まる。
その隙に、再び私の右手にボールペンを握らせたひぃくん。
「じゃあ、ここに名前書いてねっ」
フニャッと笑って小首を傾げたひぃくん。
そんな姿を見て、思いっきり顔面を痙攣《ひきつ》らせた私。
いや……ちょっと待って……。
や、やっぱり言ってないっ!
…… 私、結婚するなんて言ってないよーっ!
今にも泣き出しそうな顔をする私は、一縷《いちる》の望みをかけてお兄ちゃんの方を見た。
