
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第16章 何度でも、君に恋をする
「……ひぃくん……あれは、私が卒業するまでって意味だよ……? そもそも私、結婚するなんて言ってないよ……」
ーーー!?
そこまで言った後、目の前を見て後悔した私。
物凄い勢いでブルブルと震え出したひぃくんを見て、焦った私は恐る恐るひぃくんに向けて手を伸ばす。
ーーすると、俯いていたひぃくんが突然ガバッと顔を上げた。
ーーー!?
鼻水を垂らしながらブルブルと震えて泣くひぃくんは、ショックに顔を歪めたまま私に向かって口を開いた。
「卒業するの嫌だったのに……っ。でもっ……花音と結婚できると思ったからっ……だからっ……っだから我慢したのにぃーっ!!! 」
あまりの大声に、堪らず後ろへ仰け反ってしまった私。
こ……鼓膜が破れるかと思った……。
滝のような涙を流して大泣きするひぃくんを見て、私はヒクリと顔を痙攣《ひきつ》らせる。
申し訳ないとは思う……。
だけど、勝手に勘違いしたのはひぃくんだし……。
私にはどうする事もできない。
「……ひっ……ひぃくん……。なんか……ご、ごめん……ね……? 」
本当に私が悪いのだろうか……?
そんな事を思いながらも、大泣きするひぃくんを放っておく訳にもいかず、とりあえず謝罪の言葉を述べた私はヘラッと笑った。
「花音っ……花音っ……。結婚してっ……下さい……っ」
「……っそれは……できないよ、ひぃくん……ごめんね……? 」
「どうして……? 約束したのにっ……。……っ! ま……まっ……まさか……っ! 」
青白い顔をしてガクガクと震え出したひぃくんを見て、今度はまた一体何事かと、怯えて身構える私。
「ふっ……ふりっ……不倫っ! ……花音っ! 不倫だなんてっ……不倫だなんて酷いよ……っ! 」
ガシッと私の肩を掴んだひぃくんは、そう言って泣きながらガクガクと私の身体を揺らした。
……不倫て何よ……。
私達まだ結婚もしてないじゃない。
私が浮気してるとでも言うの……?
……酷いよひぃくん。
私、こんなにひぃくんの事好きなのに……。
ユラユラと揺れる視界の中に見えるのは、鼻水を垂らしながら泣いているひぃくんの姿。
そんな情け無い姿を目にしても、やっぱり好きだなーなんて思えてしまう私は……相当ひぃくんに惚れているのだ。
