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Happiness day

第28章 Crasy Moon ~キミ•ハ•ムテキ~

彼女もコーヒーカップを手にすると、口元に運んだ

彼女の唇に目が止まる

看板の時の濃いめの色じゃなく、淡いピンクのルージュ

化粧品の広告だったから仕方ないけど、彼女には今日くらいの薄いメイクの方があってるな

彼女はコーヒーを一口飲むと、満足気に口角を上げた

…あれ?デジャブ?

前にも見たことあるような…あの唇

そりゃ、あるのはある。彼女を目の前にしてるんだから
笑えば口角が上がるのは当たり前

でも、そっくりそのまま、同じようなシチュエーションで見たことがあるような…

トントン…

ハッとして、音がする方を見ると、彼女の指がテーブルを叩いたようだった

顔を上げ彼女を見ると、小首を傾げ不思議そうに俺を見ていた

あ…またやっちまった…

コーヒーカップを手にしたまま、彼女の唇を凝視してんだから、不思議に思うよな

「あ、あの…君の名前を知りたいな、って思って!
でも、素性を知られたくないみたいだったから、聞いていいのか迷ってて…
下の名前だけでも教えてくれないかな?
今日一日だけの付き合いだとしても、『君』って呼び続けるの寂しいから」

咄嗟に口から出たんだけど、実際知りたいと思ってたから丁度良かった

彼女は一瞬間を置いてからペンを手にする

考えたって事は、やっぱり知られたくないのかな…

彼女がノートをこちらに向けて差し出す
そこに書かれていたのは…

「『しおん』?名前『しおん』でいいの?」

彼女に確認すると、コクコクと頷いた

「そっか…じゃあ今日は、しおんって呼んでもいい?」

またコクコクと頷く

良かった…ダメって言われなくて

女性の下の名前を呼び捨てにした事ないから、結構勇気いったんだけど
彼女には『さん』付けも『ちゃん』付けもちょっと違う気がしたんだ

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