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Happiness day

第28章 Crasy Moon ~キミ•ハ•ムテキ~

窓の外の海を眺めていると、フワッと良い香りが漂ってくる

香りの発生元を見ると、彼女がケトルを手にし、お湯を注いでいた

声を掛けようかと思ったけど、彼女は返事が出来ない…
下手に作業を止めてしまうより、こっちに戻って来てからゆっくり話そう

それにしても、ケトル片手にコーヒーを淹れる姿でさえも絵になるな…

こんな人に魅力を感じない櫻井さんは、いったいどんな人に魅力を感じるんだ?

一度、じっくり話してみたいもんだな…
櫻井さんが魅力を感じる女性はどんな女性なのか

彼自身が優れているから、女性に対しても、理想が高かったりするのかな?

そんな考え事をしていたら、スッと、コーヒーが目の前に置かれ、ビクッとした

「あっ…」

隣に立つ彼女を見上げると、彼女が申し訳なさそうな表情を浮かべる

彼女は、ノートを手に取り文字を書くと俺に見せた

『ごめんなさい。驚かせてしまいましたね』

「ううんっ。俺こそごめんね?君がコーヒー淹れてくれてるのに、ボーッとしてて」

彼女は笑顔で、ふるふると首を振る

「コーヒー、凄く良い香りだね…
いただきます」

『召し上がれ』とばかりに、コクンと頷くのを見て、ひとくち啜った

「お!うまいっ。俺がいつも飲んでるのと全然違うっ」

彼女がノートを見せる

『私のお気に入りの豆なんです。喜んでいただけて良かった』

「へぇ〜、豆から拘ってるんだ?
そりゃ旨い筈だ…
俺なんて、いつもインスタントだもん
比べちゃ失礼だったね」

『いいえ。
私もインスタントのコーヒーも飲みますよ?
インスタントでも、美味しい物ありますから』

さりげないフォローに、彼女の優しさを感じる

「うん。だよね」

彼女はニコッと笑うと、向かい側の席に座った

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