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Happiness day

第28章 Crasy Moon ~キミ•ハ•ムテキ~

俺が絵を描く為に櫻井さんが手配してくれた場所は、プライベートビーチ付きの貸別荘

あの短い時間での打ち合わせの中で、次々と必要な事を提案し、解決していく姿を見て
松岡さんが言った『こいつ一人いれば、事足りる』の言葉を身を持って知った

ニノも仕事が早いヤツだけど、それ以上だ

俺が『出来るだけ人のいない海岸と、イメージを膨らませる為に、月明かりの下での彼女を見たい』と言っただけで
それに相応しい場所をあっと言う間に探し出し、手配した

しかも、月齢を調べて、満月の日に…

完璧としか言いようがない

こんな優れたアシスタントがいるなんて…松岡さんが羨ましい

約束の日は、天気にも恵まれた
今日の天気予報は、一日晴れ…
きっと、満足いく絵が描ける事だろう

櫻井さんから『鍵は彼女に預けてある』と連絡をもらい、約束の時間に別荘を訪れた

玄関の前に立ち、深呼吸をする
ドキドキする鼓動を全身に感じながら、手をチャイムに伸ばした

ゆっくりと押して指を離す

話せない彼女からの返事は勿論なく
しばらくして、ゆっくりとドアが開き、あのポスターの人物が姿を表した

ドキドキは強くなるが
彼女にしてみれば見知らぬ俺…
不安がらせないようにと、すぐに自己紹介をした

「イラストレーターの大野です。今日は一日よろしくお願いします」

頭を下げて挨拶して元の姿勢に戻ると
彼女はフワッと微笑みを浮かべた

事前打ち合わせの時に、お願いしておいたが、今日の彼女はナチュラルメイク

それが功を奏したのか、俺が想像していた女神の微笑みを上回る、美しさと優しさを兼ね備えた微笑みだった…

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