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ホントノ私ハ、此処ニイル

第2章 第2話


 重さのわりにかさばる資材を棚へ補充していると、わたしの携帯が震えました。

「恵里子さん、今本店でしょ? 渡辺マネージャーに代わってもらえる?」

 会社の上司からの電話でした。


 わたしの勤める『カツラギ資材』は、仕事でもプライベートの携帯を使うことが当たり前となっているような個人経営の小さな会社。

 渡辺さんにお渡しするにはストラップがあまりにかわいく揺れて、少々気がひけましたが、上司の業務連絡なので致し方ありません。


「渡辺さん? 課長の山崎からなんですがお電話、出ていただけますか?」

 わたしが差し出した携帯を「ああ」とだけ言って受け取った渡辺さんは、机に向かってたまま上司と会話をはじめました。

 どうやらこの夏の新作で涼感の出るトレーの相談のようです。

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