
土壇場の恋・あなたならどうする?
第4章 綱吉と竜二
「で、誰にやられたんだ?」
(話し蒸し返すなよ……そんなのあんたが知った
ところで、何の得にもならないだろ)
しかし竜二はよほど知りたいのか?
綱吉の肩をガッツリ掴み、ばっちり視線も合わせ
半端ない威圧をかけてくる。
「……」
「話すのが辛いなら無理に話せとは言わねえが、
誰かに言って楽になる事もある」
思いがけない竜二の優しい口調と言葉に、
頑なな綱吉の心も微かに揺れ動く……が。
そんなすぐには素直にも、
目の前のイケメンの事も信じる事ができず、
綱吉はだんまりを続けた。
「……」
「ま、いいか。お前の身の上話は追々聞くとして、
腹減っただろ? 朝飯できてっから」
と、竜二は妙に弾んだ足取りでこの部屋から
出て行った。
1人に戻ったところで、
改めて室内を見回してみた。
…… …… ……
今まで世話になっていた叔母の家だって、
旦那(叔父)が開業医だから世間一般的に言って、
ちょっとは裕福な家庭だったと思う。
だけど、この家は ――
壁に掛けられている絵画や無造作に置かれている
アンティークの置物ひとつ取っても
叔母の家とは桁違いの金持ち臭が漂っている。
『ツナ~っ! 早く来いよぉー』
隣室から聞こえてきた声に
”はーい”って返事をして慌てて立ち上がり、
ふと思った。
……??
(俺、あいつにいつ名前教えたっけ?)
