無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

彼は後攻で
去年と同様、挑発してくる対戦者のダンスを微動だにせず受け止める

大抵の場合、相手の挑発に合わせ自分も少し体を動かしたりするんだけど
これが彼のスタンスなんだろうな…

その動じない彼がまたカッコよく見えちゃうんだ

相手のダンスが終わると
さっきまでの『静』から一気に『動』に変わる

「…カッコイイ…」

思わず口から漏れてしまう程
彼の踊りは誰よりも素晴らしい

去年よりもキレもスピードも格段に上がってる
そして、あの体重を感じさせない軽快さ

彼の周りだけ無重力なのか？

誰もが彼のダンスに魅了された１分間…

歓声、拍手、口笛が鳴り止まない

審査時間に入り、一旦ステージ上から出場者が退場した

「はぁ…」

もう凄すぎて溜息しか出ないよ

「スゴっ…
この前見た時よりもパワーアップしてるけど
本人だよね？」

雅紀もあまりの凄さに驚いてるみたいだ

確かにあの動画よりも更にキレッキレのダンスだった

「少なくとも俺が去年みた人は彼だよ」

ダンスはパワーアップしてたけど
あの雰囲気は去年と変わらない

「凄いねっ！翔の憧れの君！」

急にテンションを上げ
俺をギュウギュウに抱きしめる

「イタイッ雅紀！
おまっ！バカ力なんだから手加減しろよ！」

そう言って聞くような奴じゃないのはよくわかってる…
よくわかってるけど、マジで痛くて苦しいんだって！

「雅紀っ！離せっ…」

「うわっ！」

雅紀の驚きの声が聞こえたかと思ったら
急に雅紀の腕から解放された

「…え？」

なんで？

雅紀の腕を掴んでいたのは
さっきまでステージ上でキレッキレのダンスを踊っていた彼だった…