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take a breather

第3章 このままもっと

翌日の夕方6時
潤が予約してくれた店に智くんと向かった。

真冬の凍えるような冷たい風が吹くなか
少しでも温もりが欲しくて、智くんに体を寄せて歩いた。

「今日は夕方集合なんだね?
いつもならもっと早い時間に来てあちこち行くのに」

「ん、なんか他に用事があるみたいだぞ。
東京には午前中に着いてるって」

「用事?なんだろ…こっちに用があるなんて」

「さぁ…聞いたんだけど教えてくれなかった」

「ふ~ん、まぁ俺たちに言えないこともあるか」

高校を卒業して10年…
頻繁に連絡を取り合う仲とはいえ、なんでも話せる訳でもないだろう。

俺だって男と付き合ってたことは言ってないし。

話したらどう思うかな?

智くんには恋人が出来たことはすぐに伝えた。

それまでほぼ毎日家で夕飯を食べてたけど、恋人が出来たら外食も増えるだろうと思ったから。
相手が男とは言わなかったけどね。

付き合い出してひとつき経った頃、智くんに突然『翔くんの恋人って男の人?』って聞かれた時は正直焦った。

智くんに嫌われたらどうしようって不安になったし…
でも、智くんに嘘は吐けないから、『うん、そう…』とだけ言った。

その言葉を聞いた智くんは、少し寂しそうな顔をしたんだけど『そっか…』の一言だけで終った。

それからも智くんの俺に対する態度が変わることもなく
智くんはそういうことに偏見を持たない人なんだと安心したんだ。

でも、潤は?
いくら過去のこととはいえ、俺が男と付き合ってたと知ったらどう思う?

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