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take a breather

第3章 このままもっと

「翔くんさ、幼稚園のとき、昼寝の時間になると泣いてたの覚えてる?」

「うん、覚えてる」

「そっか、覚えてるんだ」

「もちろんだよ。あれが俺と智くんの始まりだし」

少し嬉しそうに微笑んだ智くん。

「あの時さ、翔くんが何しても泣き止まなくて、先生たち困ってたじゃん」

「あ~、うん。相当困らせたよね」

「泣きじゃくる翔くんを見てて可哀想でさ、なんとかしてあげたくなった」

「それまでひとりで寝たことなかったから、寂しくなっちゃったんだよね」

「わかる…俺も母ちゃんが忙しいとそういうことあったし。
そんとき、姉ちゃんが一緒に寝てくれたんだよね。
だからさ、翔くんも誰かが一緒に寝てあげれば泣き止むのかな?って思ったんだ」

「あの時、先生たちは一緒には寝てくれなかったもんね。
で、智くんが突然布団に入ってきて、俺、スッゴい吃驚したんだ」

「ははっ…やっぱり吃驚してたんだ。
あの時の翔くん、目ん玉ひんむいてたもんな」

「うん。『なにっ!?』って…」

「でも、その表情がスッゲェ可愛くて…
そしたらさ、いつも母ちゃんや姉ちゃんがしてくれるみたいに、背中叩いてあげてた」

「ふふっ…それで安心して寝ちゃったんだなぁ」

「それからは、お昼寝の時間になると翔くんが俺の布団に入ってくるようになったんだよな」

「えっ⁉そうだったっけ?」

一緒に寝てたのは覚えてる。
でも、俺から智くんのところへ行ってたのは記憶に残ってなかった。

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