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take a breather

第12章 Step and Go

翔は用意してくれた缶ビールをひとつ俺に差し出した

「はい」

「おっ、サンキュ」

それを受け取りプルタブに指を掛ける
翔もほぼ同じタイミングでプルタブを開け
アイコンタクトで缶をコツンと合わせた

「「乾杯」」

ゴクっとひとくち飲んで同時に感想が漏れる

「「ウマッ」」

言葉が被りふたり顔を見合わせた

「さっきのカクテルは不味くはないけど
ちょっと甘かったよね」

「ふたりから門出を祝っての贈り物だから文句は言えねぇけどな」

「もう飲むことないかな」

「1年に一度くらいは飲んでもいいんじゃね」

「なんで?」

翔が缶に口を付けながら不思議そうに俺を見る

「今日の記念に毎年同じ日にマサキに作って貰おうよ」

「智ってそんなことする人なんだ
なんで今まで彼女さんたちと上手くいかなかったの?
女の人って記念日とかに煩いから
お祝いとかしたら喜んで貰えたんじゃない?」

「ん?だから今まではして来なかったからだろ?
記念日もそうだけど誕生日すらまともに祝ってやったことないかも」

「誕生日も⁈それじゃ上手くいくわけないね」

翔が驚きの表情を見せた

「やっぱそう思う⁈」

「思う…記念日はいいとして
誕生日はお祝いしたいかな」

「誕生日いつ?」

「1月25日…」

「オッケー。盛大に祝っちゃる」

「いや…盛大じゃなくても…
その日ふたりでケーキ食べるくらいでいいよ」

「祝って欲しいわりには謙虚だな…」

「だって…一緒にいられるだけで十分じゃん…
それ以上欲をかくとロクなことがない…」

視線を伏せ 少し哀しそうに微笑んだ

「何かあった?ロクでもない事」

もしあるとするなら元彼がらみの事だろう…

過去の嫌な話はしたくないかもしれない

でも誕生日に悪い記憶があるなら
それを吐き出させていい思い出を作ってやりたい

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