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take a breather

第12章 Step and Go

「思い出したくない感情って何?」

ショウは視線を伏せ哀しそうに微笑んだ

「彼に愛されて幸せだった頃の思い
彼に他に好きな人がいても抱かれてる時は自分が一番だと思ってたから」

「俺に抱かれた時、その感情を思い出した?」

「ん…智は自分だけじゃなくて
俺の事もキモチ良くしてくれただろ?」

「あぁ…あの時さ、お前にイカされてなんか虚しくなったんだよな…
ひとりだけで気持ちよくなるなら相手いらないじゃんって
だからお前にも気持ちよくなって貰いてぇなぁって
お前に教えられた事 仕返した」

「そうだったんだ…
冷めてるヤツなのかと思ったらさ
イキナリ熱くなるから
それに煽られて俺も熱くなっちゃった…」

「それは良かった」

ショウはゆっくりと首を横に振った

「…良くないよ
もうあんな思いはしたくないのに
また性懲りも無く愛情を…温もりを求めてしまいそうになる
だからやめたんだ
また智みたいな人に当たったら嫌だから」

「次はわからねぇだろ?」

「え?」

「前の男はそうだったかもしれないけど
次の相手がそうだとは限らない
もしかすると次に出会う相手がショウの本当の運命の相手かもしれないじゃないか」

そう言うとショウは目を見開いた

「智って意外だらけ…
運命の相手なんて信じてるんだ
『そんなのいるか』って馬鹿にしそうなのに
案外ロマンチストなんだね」

俺だって『運命の相手』なんて考えたこともなかったよ

でもショウと出会ってから俺の考えはことごとく覆される

たったひとりの人の幸せを心から願って
その為の尽力は惜しまない

これが本当の『愛』なんだと教えられた

そしてそのことを
身をもって教えてくれたショウを運命の相手だと思ってしまう俺は
案外ロマンチストなヤツなのかもしれない

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