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take a breather

第12章 Step and Go

翌週の土曜日、待ち合わせした駅の改札口に時間より少し早めに到着

誘ったのは俺なんだからショウを待たせるようなことしたくない

そう思っていたのに…

「ごめんっ、待たせた?」

改札を通りながらショウの姿を見つけ駆け寄った

「いや 俺もちょっと前に着いたばかりだからそんな待ってないよ」

ちょっと前って言っても俺でさえ10分前に来たのに
一体コイツは何分前に着くつもりで来たんだ?

「でも待たせたことに変わりないから メシ奢らせて」

「え、いいよ…そんなことしなくて」

「いいからゴチさせてよ。じゃないと俺の気が済まない」

「まぁ…そこまで言うならご馳走してもらおうかな」

「ヨシっ!じゃあ行こう!何食いたい?」

駅の出口に向かって並んで歩く

「ん〜、智の奢りなら高級焼肉?」

「なんだよそれ。さっきは遠慮してた癖に」

「ははっ、冗談だよ。時間ないし、軽く食べようって言ってたろ?」

「別の日ならいいぞ?」

「え?」

「高級焼肉…じゃなくても良いけどさ
今度ゆっくりメシ食いに行こうよ
ショウが食いたいものでいいから」

マサキの店以外でもショウに会いたい

横並びじゃなく、正面からショウの顔を見てゆっくり話がしたい

特別な事じゃなく、日々の生活の中でショウと会いたい

俺としてはその第一歩が今日なんだけど…

「あ…うん…いいよ」

戸惑いながらも返事をくれた事に嬉しくなる

「ショウって何が好きなの?」

「ん〜、貝類好きかな…
帆立とか赤貝とか好き」

「へぇ〜、そうなんだ。だったら俺のよく行く店行こうよ
刺身とか旨いの食わせてくれるから」

「智、魚好きだもんね
智の舌を信じてそこ連れてって貰おうかな」

「おう!任せとけ、うっまいの食わせてやるから」

「智が作るみたいな言い方だね」

「ははっ、だな」

ショウが楽しそうに茶化してくる
こんな軽いトークもまた嬉しい

それに合わせて足取りも軽く歩いていたのに
隣を歩くショウの足が突然止まった

何事かと振り返りショウを見ると先ほどまでの雰囲気とは一転

無表情で真正面を見つめていた

「ま、さひろさん…」

『まさひろ』?

やっと聞き取れるくらいの小さな呟き…

ショウの視線の先には小さな赤ちゃんを抱いた男性と
その横にピタリと寄り添い歩く女性の姿があった

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