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take a breather

第10章 Lotus

店の外に出て辺りを見渡した

でも ふたりの姿は見当たらなくて…

家まで送っていった?
侑李くん泣いてたし….

でもそんなことしたら侑李くん 益々智くんのこと諦められないんじゃ…

その辺をフラフラと歩いて行くと 人気のない裏路地に智くんの背中が見えた

なんでこんな所に?

近付こうとしたその時
智くんの両脇から伸びる腕が智くんの背中にしっかりと回った

その腕が誰のものかなんて考えるまでもない…

智くんはその腕を振り解こうともせず
少し頭を下げ ただ受け止めるだけ…

やっぱり突き放せないんだ…
侑李くん 可愛いもんね

その様子を見続けることが出来なくて
ズキズキと痛む胸を右手で押さえ
その場から立ち去った


俺が席に戻るとカズさんが眉を顰める

「あのバカ…」

小さく呟いた言葉は誰に向かって吐かれたモノなんだろう…

「翔ちゃん?大丈夫?」

相葉さんからの問いかけ…

何が『大丈夫?』…俺 何か心配されるようなことあったっけ?
トイレに行ってくるって言っただけだよな?

訳が分からず相葉さんを見つめていると 相葉さんの眉がさがり
困ったような微笑みを浮かべた

なんでだろ?

「ただいま」

不思議に思っていると 不意に聴こえた智くんの声にビクッとした

戻ってきたんだ…

あのまま侑李くんを送って行くのかと思ったのに

戻ってきてくれたことにホッとしてる自分と
このあと智くんにどう接して良いのかわからずに少し緊張してる自分がいた…

「『ただいま』じゃないよ
何してたんだよ 見送るだけじゃなかったの⁈」

カズさんの強めの問いに智くんはハッキリと答えた

「ちゃんとケリ着けてきた」

「ならなんで…」

カズさんの視線が俺に移る

それにつられるように
椅子に座った智くんがこちらを向いた

「翔ちゃん?どうした?」

智くんの心配そうな顔…

俺 やっぱどこか変?

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