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take a breather

第1章 Now or Never

「じゃあ、俺ご飯作るからちょっと待ってて?」

「あ、智くん」

俺が立ち上がると翔くんに呼び止められた。

「ん?」

「作るとこ見てちゃダメ?邪魔になる?」

上目使いで問われたら、駄目なんて言えるわけない。

「邪魔にはならないけど、すごい技とかないよ?」

「それでもいい。智くんが料理するとこ見ていたい」

「ん、わかったよ。おいで?」

俺が手を差し出すと、その手を握り立ち上がる翔くん。

「ありがと」

10歩程で着いてしまう距離を手を繋いで歩いた。

「なに作るの?」

冷蔵庫から材料を出すと、興味津々に聞いてくる。

「オムライス」

「オムライス⁉智くん、オムライス作れるの?」

「あの店には到底及ばないけどね。
翔くんの好きな食べ物ってオムライスしか知らないから」

「嬉しい…ありがと、智くん…」

「期待に沿えるかどうか…」

「智くんが作ってくれるならきっと何でも美味しいよ」

「ん~、だといいんだけどな」

玉ねぎを切り始めると、またまた翔くんの感嘆の声が上がる。

「すご…智くんって器用なんだね」

「器用かわかんねぇけど、玉ねぎのみじん切りは好きだな」

「俺ね、凄い不器用で。
俺が包丁持つとみんな慌てるんだよね。
危ないから止めろって…
これじゃあ、いつまで経っても実家から出られないよね…」

「翔くんが出来なくても、俺が作れるんだから何も問題ないだろ?」

「えっ⁉」

「え…って、あっ…」

翔くんを見ると顔を紅く染めていた。

「あっ、あの、べっ、別に俺が作れても、関係、ない、よなっ…ははっ、なに、言ってんだろ…俺」

当たり前のように一緒に暮らすことを前提に話しちゃったよ。

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