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take a breather

第7章 コイゴコロ

櫻井のアパートのある駅で降りた

この駅で降りるのは三日連続
昨日も家の前まで櫻井を送り届けた

櫻井は送らなくても大丈夫って言ったけど
『俺が少しでも長くいたいんだから送らせろ』って言った
頬を染めながら『お願いします』って嬉しそうに笑う櫻井が愛おしくて
人気がなくなるところまで我慢して、手を取り歩いた

今日はまだ時間も早いし
店が駅から近い事もあって手は繋げないけど
他の人よりも少し近い距離で並んで歩く

「大野さん、ここです」

「え?ここ?」

櫻井が足を止めたところは小料理屋

学生の頃から行ってたって言ってたけど、随分渋い店に通ってるんだな

「はい。一見入り辛そうですけど
結構安く食べさせて貰えるんで、学生の頃はありがたかったんですよ」

学生だったら確かに入り辛い店構えかも…
古くからやってそうだけど
そう感じさせないほど外観は綺麗に手入れが行き届いている
高級感が感じられる程だ

櫻井が引き戸を開け、暖簾をくぐり入って行く

「大将、こんばんわ」

「おっ!翔くんじゃねぇか
今、丁度噂してたところだったんだよ」

櫻井の後について入って行くと
初老の男性が優しい笑顔で櫻井を迎えた

「噂?誰とですか?」

大将がカウンターに座る男性に視線を流した

「よっ!翔 久しぶりだな」

カウンターに座る男性がにこやかな笑顔を浮かべ、片手を上げた

「え⁈准一さん?なんで日本に?」

櫻井は目を見開き大層驚いた顔をしていた。

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