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take a breather

第1章 Now or Never

「あと一日くらいゆっくりしていけばいいのに。
一昨日は黙っていなくなったうえに外泊までして」

「ごめん、急用が出来たんだよ」

「ま、いいけど。気を付けて帰りなさいよ」

「うん」

かあちゃんにブツブツ言われたけど、仕方ないよな。
大学に入ってから滅多に帰ってこないのに、独り暮らしの感覚で家に連絡もせず無断外泊。

しかも予定ではあと一日いるはずだったのに。
ごめんな、かあちゃん。
かあちゃんよりも一緒にいたい人に出逢っちゃったんだよ。
いつか家族にも紹介できるといいな。

そんな事を考えながら、まだまだ来ない電車を待っていた。
少し、いや、だいぶ早く家出てきちゃったからな。
翔くんに会えると思うと落ち着かなくて、万が一にでも時間に遅れる、なんてことはしたくなかったから。

漸く電車が来る時刻。
電車が停まりドアが開くと少し唇を尖らせ膨れっ面をする翔くんがいた。

「おはよ、翔くん」

「おはよ…」

膨れてるのにちゃんと挨拶するとこが可愛い。
思わず顔が緩む。

翔くんを誘導しながら空いてる席に座った。
まだ朝早いせいか車内はガラガラ、そっと翔くんの手の上に手を乗せた。

「怒ってるの?翔くん」

「うん。怒ってる」

「ごめんね?」

「狡い…」

「なにが?」

「あんな急に、しかも一瞬だけなんて。
…どうせするならもっとちゃんとして欲しかったのに」

怒ってる理由が超可愛いんですけど。

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