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take a breather

第27章 Turning Up

半紙を翔くんの前にセットする

「翔くんの好きな文字でいいよ?
自由に書いてみて?」

「好きな文字、ですか…」

「うん、好きな言葉とかあればその中の一文字とか?
僕の場合は『こころ』だね」

翔くんは正面を見て『あぁ…』と納得し、筆に墨をつけた

ドンと筆を置き、そこから思いっきりはらう
一画一画丁寧に書き進めて、書き上がった文字は『信』

「ふふっ、翔くんらしい力強い書だね」

「やっぱり汚いですよね…」

「ううん。とても素敵な書だよ?
翔くんの心が表れてる
書道は絵と同じ…
観た人の心に響けばいいんだ
翔くんの書いた文字は、僕にちゃんと届いたよ?」

「本当ですか?」

「うんっ。人を信じたい
これからも自分の信じる道を進んでいきたい」

翔くんはちょっと目を見開いて驚いた顔をした

「当たりかな?」

「は、い…智さんの言った通りです
過去の事があるせいか、どうしても人を疑って見てしまう所があって…
でも本当は嫌なんです、人を疑うなんて
だから人を信じられる人間になりたい」

「うん、翔くんの文字を見ればわかるよ?
それを強く願ってるって
だから大丈夫…翔くんがそう願ってるなら変われるから」

「智さんにそう言って貰えると安心します
書道だけじゃなく、智さん自身にも安らぎの効果があるんですね」

翔くんの優しい眼差しが僕を見つめる
そんな真っ直ぐな瞳で言われたら、ドキドキしちゃうよ…

「だったら…疲れたら僕のこと呼んで?
すぐに翔くんのところに飛んで行って癒してあげる」

照れ隠しにそう冗談めかして言うと、翔くんは真剣な表情をした

「その言葉…信じていいですか?」

「え…」

思ってもみなかった返し

「俺、信じますよ?智さんのこと」

「うん。信じていいよ、僕のこと…
僕は翔くんに嘘は吐かないから」

翔くんの瞳を真っ直ぐに見つめ返し、そう伝えた

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