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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

母さんが帰ってきた気配がした

夕食を食べる気力もないから、その事を伝えに行く

「あら?夏バテ?大丈夫?
そうめんでも茹でてあげようか」

そうめんなんか出されたら、それこそ大惨事になる

「ううん、いい…今日はもう休む」

「そう…お腹空いたら言ってね
何か作るから」

心配そうな顔で俺を見つめる母さん
ごめんね、心配掛けて…

「ありがとう、おやすみ」

「おやすみなさい」

部屋で服を着替え、またベッドに横たわる

スマホを手に取り画面を開くが、先生からの新たな着信はなさそうだ

返信しないんだから当たり前か…

スマホを持った腕をベッドに投げ出す

天井を見上げれば、目尻から涙が流れ落ちてくる

まだ泣けるんだ…

結構マジだったからな
大野先生いわく『貴重な青春時代』…

その貴重な時間を、1年以上誰にも言えず想い続けてたんだから

あ、でも二宮先生は気付いてたか…
二宮先生に話したら、なんて言うだろう

俺なりに頑張ったと思うけど
『頑張りが足りない』って言われるかな

それとも『男同士なんだから仕方ないよね』って慰めてくれる?

もう少し時間が経ったら、過去の思い出話として二宮先生に話してみようかな

それが出来る時が、大野先生への想いが、本当に吹っ切れた時なんだと思う

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