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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

先生が見せてくれた絵は、今まで観てきた物とは違うスタイルの物も多かった

リアルに風景を描いたような物や、人物をデフォルメしてキャラクター的に描かれた物など、想像以上に楽しめた

「これもいいなぁ…こっちも面白い…」

「櫻井くんは、どういう絵が好きなの?」

「どういうとかは特にないです
観て心惹かれた絵が好きな絵ですね
先生の絵はどれもこれも惹かれる物ばかりなので、先生の描く絵はどれも好きです」

「嬉しいなぁ…生徒からそんな風に言って貰えると」

『生徒から』…わかってはいるけど
そんな風に言われると胸がズキっとする

俺は先生にとっては単なる生徒の中のひとり…

他の生徒よりは多くの秘密を共有してるのかな、とも思うけど
実際の所わからないしね

もしかすると、小瀧も大野先生と連絡先交換してるかも知れないし?
この家にも来るのかも知れない

俺だけが大野先生を特別に想ってるだけで
大野先生にしたら、俺なんてただの生徒…

せめて『生徒から』じゃなく『櫻井くんから』って個人名で言って貰えたら、まだ少し期待が持てるのに…

いや、期待しちゃ駄目なのか…

期待するだけ、落ち込みも激しくなるもんな

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