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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

「櫻井くんのクラスは、文化祭なにやるの?」

「うちは甘味処です」

「いいねぇ、甘味処
俺、甘いの好きなんだよね」

大野先生が、実は甘い物好きだと言う事は知っている

たまにだけど、コーヒーと一緒にお菓子も出してくれる

それが見事に甘い物ばかりだから
大野先生って甘いお菓子が好きなんだなぁ、って密かに思ってた
これも、生徒の中では俺だけが知ってるココだけの秘密

「是非いらしてください」

「うん。行く行くっ
んふっ、楽しみだなぁ…」

楽しみなのは、甘い物が食べられるから…
そんな事はわかっていても、大野先生が来てくれると思うだけで嬉しい

「…俺も、楽しみです」

「ん?」

大野先生が首を傾げる

「あの…絵…大野先生の絵、楽しみです」

「あ、絵ね?
うん、ありがとう。櫻井くんは、ほんと俺の絵、好きだよね
絵の展示依頼された時もさ
最初は、どうせ誰も来ないんじゃないかと思って断ったの
でも、小瀧くんが何度も頼んでくるし
それに誰も来なくても、櫻井くんが来てくれるからいっかな、って思い直して…
だから引き受けたんだよね」

「俺が来るのは決定なんですね」

「うん、決定。だって来てくれるでしょ?」

大野先生がふにゃっと照れ笑いする

「ふふっ、そうですね。来ちゃいますね」

そんな顔されたら、誰かに『行っちゃダメ』って止められたって来ちゃうよ

「でしょ?
あ、コーヒー入れるね?
ちょっと待ってて?」

「はい…」

このままでいいのかも知れない…

このまま…居心地の良い空間のまま
ちょっとだけ、他の生徒よりも大野先生に近い存在でいられるのなら…

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