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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

「はい、コーヒー」

「ありがとうございます」

コーヒーを受け取ると、大野先生がいつものように隣に座る

「そういえばさ…さっき、家にある絵、観てみたいって言ってたでしょ」

ボソッと呟いたの、ちゃんと聞いててくれたんだ
あの後すぐに小瀧が入って来たから、うやむやになっちゃってたのに

「えぇ、まだ観てない作品があるなら観てみたいな、って
でも、文化祭で観られるんですよね?
だから絶対観に来ます」

「そうなんだけど…
流石に全部は持って来られないから
櫻井くんの都合が良い時でいいんだけど、文化祭に展示する絵、選ぶの手伝って貰えないかな?」

「選ぶのですか?いいですけど、どうやってですか?」

「もちろん、俺の家に来て貰ってだよ?
他に保管してる所ないし」

「へっ?…大野先生の、家?」

小瀧が手伝うと言った時、羨ましいと思ったけど
俺、先生の家に行っていいの?

「ダメかな?夏休み中は受験勉強忙しい?」

「いっ、いいえっ!全っ然、忙しくないですっ」

ブンブンと首を横に振る

「『全然』はダメだろ…
櫻井くんがいくら成績が良いからって、油断しちゃダメだよ?
この夏休みで、みんな成績伸ばしてくるんだから」

そんな事わかってる

でも、先生の家に行けるチャンスなんだ
何よりも最優先事項だよ

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