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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

いつものようにコーヒーを受け取る
が、この2年で変わったモノがココにもあった…

コーヒーを入れるコップを紙コップから、プラスチック製のカップに変えた

毎日使うから、紙じゃない方が良いだろうと、大野先生が用意してくれた

プラスチックなら軽いし、入れ物付きだから持ち運びにも便利

パステルカラーの5色セットだけど、いつも使う色は一緒

大野先生は水色で、俺はピンク

最初にそうしたからなのか、大野先生はいつもこの色を使ってる

なんだか、俺専用のコップみたいで嬉しい…
勿論、そう思ってる事は大野先生には内緒

「何かあった?」

大野先生からの突然の問い掛け

「なんでですか?」

「ん?入って来た時の様子がいつもと違ったから」

「あぁ…もう2年経っちゃったんだなぁ、って思って…」

「ふふっ、早いよなぁ…高校時代の3年間って…
俺なんて殆ど記憶ないよ」

「そうなんですか?
高校時代って結構濃い時間だと思うんですけど」

「濃密度は人それぞれなんじゃない?
俺は、ぼーっと過ごしてしまったんだろうな
青春らしい思い出が何もない」

「恋人とか…いなかったんですか?」

ちょっとドキドキしながら質問する

「恋人どころか、恋もしなかった…
絵ばっかり描いてる日々だったなぁ」

「そうですか…」

大野先生は高校時代に恋人いなかったんだ…
俺も人の事言えた立場じゃないけど、恋はしてる

青春を謳歌してるかは別だけど

だってその相手が男性教諭って…
今もそうだけど、これから先の人生でも誰にも話せない青春時代の話だよな

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