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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

身構えた俺に対し、二宮先生は大野先生の事には触れず
真面目に進路の話を始めた

「2年間なんてあっという間だからな?
早めに将来の事を考えるに越した事はない
なりたい職業によっては、専門の大学に行かなきゃならないし
櫻井の成績なら、医者も目指せそうだしな
そうなると医大に進まなきゃならない」

資料を見ながら話す二宮先生を見て
『ちゃんと先生なんだ』と、失礼ながら思ってしまった

「どうした?櫻井
俺の顔に見惚れてるのか?」

マジマジと見ていたせいか、二宮先生からそんな指摘が入った

「ちっ、違います!」

「ははっ、だよなぁ?
俺は櫻井の好きな顔じゃないもんなぁ」

ニヤッと笑うその意味ありげな表情…

「櫻井ってほんと素直で可愛いな?
頭良いくせに、少し鈍い所がまたいい
自分の事なのに、なかなか気付かないんだもんなぁ…」

直接的ではないけど、絶対大野先生の事言ってるよな?
しかもその言い方だと、俺が自分の想いを自覚したのが最近だって事もわかってる

大野先生の名前が出ていないこの状況で、下手に否定すると自分から認めているようなモノだし…

ここは何も言わずに黙っていよう

「…鈍いけど、やっぱ頭は良いな?」

ニヤッと笑って発したその言葉もスルー
反応したら認めた事になる

「そんな警戒するなって…
俺は櫻井の担任なんだから、櫻井を無事に卒業させなきゃならない
その為の協力はするから、何か困った事があったら相談しろよ?」

そう言った二宮先生の微笑みは、いつもの企んでる笑顔じゃなかったから、素直にお礼を言った

「ありがとうございます」

『ウンウン』と満足そうに頷く二宮先生

俺の気持ちを認めてくれてるみたいで、ちょっとだけ安心した

今も大野先生の事を匂わせながら、揶揄われてはいるけどな

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