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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

「よ〜しよし、良い子」

大野先生が俺の頭をなでなでする
この扱いって、まるで…

「俺、犬じゃないです」

「ごめんごめん
櫻井くんってさ、ワンちゃんみたいなんだよね」

大野先生、ほんとにそう思ってたんだ
それにしても犬だなんて、いまだかつて言われた事ないよ

「どこがですか?」

「ん〜、感情がわかりやすい?
ワンちゃんって、嬉しい時、尻尾ふるでしょ?
櫻井くんも『機嫌がいいんだなぁ』って時、すぐにわかっちゃうんだよね」

「えっ!どうしてですか?」

「瞳、かな…
瞳がキラキラ輝くんだよね
目は口ほどにモノを言う、ってね…
他の人もそうなのかも知れないけど
櫻井くんは目が大きいせいか、それがわかりやすい」

「大野先生はわかりませんけど…」

「俺はもうおじさんだから…
櫻井くんのように、素直に目に感情は出ないよ」

大野先生は、目を細め微笑んだ

「根に持ってます?
俺がおじさんって言ったこと」

おじさん扱いした事、気にしてる?
女の人は年齢を気にするけど
男の人も気にするモノなのかな

だとしたら俺、すごい失礼な言ったよね…

「ほら、わかりやすい
そんな顔しなくて大丈夫だよ?
気にしてなんかないから
ただ、若い櫻井くんがちょっと羨ましくなる時はあるかな?」

「俺が羨ましい?」

「そう…パワーが溢れていて、見ていてたまに眩しくなるよ
キラキラの瞳もそのひとつ…」

そう言って微笑む
大野先生の優しい笑顔の方が俺には眩しいよ

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