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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

「櫻井くん?どうかしたの?」

「え?」

視線を上げると、大野先生の心配そうな顔が目に入った

「なんか、元気なさそうだから…
考え混んでたみたいだし、何か悩み事?」

「…いえ、悩み事なんてありません」

「そう?ならいいんだけど…
何かあったら相談してね?
俺、一応教師だから」

「一応じゃなくて、大野先生は立派な教師ですよ」

「んふっ、ありがと
お茶にしよっか。コーヒー入れてくるね」

ふゃっと微笑むと、大野先生は立ち上がった

「二宮先生と飲んでたんじゃないんですか?」

歩き出した大野先生の背中に向かって声を掛ける

「ううん、飲んでないよ?
二宮先生は、勝手に自分の分だけ入れて飲んでた」

コーヒーを紙コップへと注ぐ音がする

「俺は、櫻井くんが来るだろうと思ってたから、飲まずに待ってたよ」

首だけ振り返り、ニコニコと笑ってそんな事を言う

もう一つのコーヒーを注ぐのに、先生が首を戻す
コーヒーを入れてる先生の背中を見ながら、なぜだか頬が緩んでしまう

俺と一緒に飲むのに待っててくれた?

「俺、先生の良いお茶のみ相手ですからね」

紙コップを2つ持ち、ソファーに戻ってきた先生

「うん、そうだよ。俺の茶飲み友達は櫻井くんだけ…
はい、どうぞ」

コップをひとつ差し出される

「ありがとうございます
でもいいんですか?俺、生徒なのに茶飲み友達で」

「あ、そっか…ほんとはダメだよね」

俺と先生は、生徒と先生の関係…
二宮先生みたいに、同い年の気さくな仲間にはなれないんだ

「じゃあ、みんなには内緒ね?」

「え?なにが?」

「ん?櫻井くんと俺が茶飲み友達だって事…
二宮先生にも注意されたしね
だから、みんなにはナ・イ・ショ
わかった?」

俺、大野先生と茶飲み友達でいいんだ…
首を縦に振ってコクコクと頷く

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