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take a breather

第23章 証

〈翔サイド〉

智さんがせっかく提案してくれたけど、グランドピアノじゃ流石に置けない

それに、あのピアノは正確には俺のじゃないし…

智さん、誤解した?
ちょっと複雑そうな顔してる

「あの…グランドピアノは祖母の物で
同じ敷地内に祖母が住んでいたので、ピアノを弾く時は、祖母の家に行って弾いてました
だからどちらにしても、勝手にピアノを移動させる事は出来ないんです」

「おばあちゃん家?なんで?」

「詳しい事は知りませんが、祖母の友人の形見とか…
勿体ないから、誰か弾いてくれって言われたのが、俺がピアノを習うキッカケです」

「そうだったんだ…
形見じゃ処分出来ないし、誰も弾かないのも勿体ないよな」

「はい。今は近所の子に弾いて貰ってるみたいですよ?
グランドピアノを触る機会もなかなか無いので、喜んで弾きに来てくれるそうです」

「俺も学校でしか見たことない
しかも、触った事はないかも…」

「わたしもグランドピアノ弾いてみたい
今度、翔くんのおばあちゃん家、連れて行ってよ」

絵莉ちゃんにも弾かせてあげたいけど、絵莉ちゃんを連れて行く事は可能なのかな…

関係性としては、叔父さんの同居人だもんな…
親御さんだって心配で預けられないだろうし

でも無理って言うのも可哀想…

「絵莉ちゃんがピアノを習って、曲が弾けるようになったら
いつか連れて行ってあげる」

「ホント⁈約束ね?」

絵莉ちゃんが小指を差し出して来た
絵莉ちゃんの前にしゃがみ、その指に小指を絡ませる

「うん。約束」

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