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〈翔サイド〉

絵莉ちゃん、ピアノ習うんだ…

懐かしいなぁ…ピアノ

大学卒業してから、キーボードすら弾いてないや

偶に弾きたくなるんだけど、前のウチでは狭くて置けなかったし
今は智さんのウチに住まわせて貰っているから、余計な物は置けない

智さんがスマホを取り出した
お店を調べようとしてる？

「智さん、この辺だと、あそこのショッピングモールに店舗が入ってますよ？」

「へぇ、知らなかった…
翔はなんで知ってるの？」

俺が軽音サークルだった事忘れてる？
だいぶ前に話したきりだったからな…

その事を伝えると、すぐに思い出してくれた
しかも子供の頃、ピアノを習っていた事まで…

楽器屋にはピアノはもちろん、ギターやベース、それにドラムなど
ありとあらゆる楽器が、所狭しと並んでいる

「すげぇなぁ…こんなに品数並んでるんだ」

「ひとつの種類の楽器に対し、いくつも揃えてありますからね」

「どれも同じじゃないんだな」

「ええ。楽器も好みは人それぞれです」

「へぇ、楽器と人も相性があるって訳か…」

「そういうことです」

「翔くん、こっち来て」

絵莉ちゃんが、ピアノの前で俺を呼んだ

さっきの話を聞いて
俺がピアノの知識を、多少持ってる事を知ったからだろう

「どういうピアノがいいと思う？」

「絵莉ちゃんのお家は一軒家？」

「ううん、マンションよ？」

「マンションかぁ…なら、音が消せるピアノがいいかな？
周りのお家にも迷惑が掛からないし、夜でもレッスンが出来る」

「そうね、その方がいいわね」

見た目はアコースティックピアノと変わらないから、一見区別が付かない

「絵莉ちゃん、この辺がそうだよ？」

数台並んでいる消音ピアノの前に立った