テキストサイズ

take a breather

第23章 証

〈智サイド〉

「はぁ…」

隣を歩く翔の口から、小さな溜息が漏れた

つまらないよな…
翔は付いて来ているだけで、何一つ楽しい事なんてないんだから

「翔、疲れたか?」

敢えてそういう聞き方をした

「えっ?いえ、大丈夫ですけど…」

不思議そうな翔の顔
本人は何で聞かれたかわかってない?
無意識のうちに出た溜息か?

「そう?今、溜息ついたから疲れたのかと思った」

「えっ…」

この反応を見ると、やっぱり無意識だったんだな

だとすると、相当我慢させてる?
翔はどちらかというと、言いたい事を言わずに内に秘めやすい

もっと思った事を口に出していいのに、まだ遠慮するんだよなぁ…

翔自身は遠慮してるつもりもないんだろうけどな

『ニノミヤ』に着きドアを開ける

「ちわ〜」

土曜日の昼過ぎ…店内は満席状態

カウンターの中からニノが顔を出す

「いらっしゃっい。あれ?なに?
仔猫の次は人の子拾った?」

「ちげーし。俺の姪っ子だよ」

「ははっ、冗談に決まってるだろ?
ごめんね、今、空いた席片付けるからちょっと待ってて」

「おう。忙しいなら俺がやろうか?」

「今日はいいよ、お客さんなんだから」

「ん」

一度中に引っ込んだニノ

「雅紀、空いた席のバッシング先にお願い」

厨房から聞こえるニノの声
やっぱりいるんだ相葉…

「いらっしゃい、大野さん、翔ちゃん
すぐに片付けるから、待っててね」

カウンターの中からしっかりエプロンをつけた相葉が出て来た

「悪いな、忙しいのに」

「ぜ〜ん然。カズさんの為なら、いくらでも働いちゃいます」

「ニノの為かよ…」

「そりゃそうですよ。店の売り上げ上がれば、カズさん喜びますから
じゃ、チャチャっと片付けちゃいますね?」

「おう、よろしく」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ