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take a breather

第21章 Be with you

目を閉じて煩悩を消し去る…

なんて、修行僧みたいな真似は出来ず
頭の中にモヤモヤと浮かび上がってくるのは、先程の櫻井さんの後ろ姿…

ヤバイっ!

頭を振って邪心を追い払う

そうだ!別の事を考えた方がいい!
さっき勉強した英単語のスペルを頭の中で繰り返す

「はぁ…」

なんとか邪心は追い出せた…そろそろ出るか…

立ち上がった瞬間、頭がクラっとした

『あっ、俺…のぼせやすいんだったけ…』

そんなことに今更気付いても
時すでに遅しってやつ…

『ガラッ』と浴室のドアが開いた音と
『大野っ⁉︎』と櫻井さんの叫ぶ声を最後に、俺の意識は途絶えた…



「大野?気が付いた?」

声がする方に目をやると、櫻井さんの心配そうな顔

あれ?俺、どうしたんだけっけ…
ここ、合宿所の部屋だよな?

「智、気が付いたの?」

櫻井さんの後ろから、ニノが覗き込む

「ん…」

「大野、まだ熱い?今、水用意するな?」

櫻井さんが俺のおでこに乗っていたタオルを退け、手のひらを当てる

熱い?水?

「…あ"、俺…もしかして倒れた?」

「もしかしなくても倒れたよ
吃驚させるなよな?」

苦笑いをするニノ

「マジか…」

風呂で倒れるなんて、カッコ悪っ!

「はい。水持ってきたよ、翔ちゃん」

相葉さんがペットボトルを差し出し、櫻井さんが受け取った

「ありがとう、雅紀」

櫻井さんはペットボトルを床に置き、俺に向き直る

「大野、起き上がれる?」

「はい…大丈夫です」

「ゆっくりでいいからね?」

櫻井さんは俺の背中に手を添え、起き上がらせてくれた

「これ飲んで?」

ペットボトルのキャップを開け、俺に渡してくれる

「ありがとうございます」

それを受け取り、ひとくち口に含む…

喉を通って行く冷たい水が、やけに旨く感じた

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