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take a breather

第20章 I seek

「どう言う事?」

「ん…俺はね?『智くん』って呼ぶのをやめた時に
智くんへの想いを閉じ込めたから…
智くんを好きな想いが外に出ないように
些細な事に期待を抱かないように
心に鍵を掛けたんだ
だから、智くんが俺の事を好きになってくれた事も気付けなかった」

「えっ?そんな前からなの?」

翔くんの想いに、これっぽっちも気付いてなかった

「うん…結構前…
でも、智くんの気持ちが俺に向く事はないんだって諦めたんだ
その方が楽だったから…
この先、可能性なんてゼロだって自分に言い聞かせないと
智くんの側にいる事が苦しくなってきた
上田と一緒…」

苦笑いする翔くん

「ごめん…辛い思いさせてたんだ」

「ううん…謝らなくていい…
何もしないで諦めようとした俺が悪い
上田に告白されて、その事に気が付いた
だから、もう一度頑張ってみようって思えたんだ」

翔くんが俺の胸に顔を埋め、ギュッと抱きついてきた

「諦めなくてよかった…」

「うん…」

俺も翔くんを強く抱きしめた

不思議なもんだな…

翔くんが俺を諦めようとした事が
俺が翔くんへの想いに気付くキッカケになった

そして、再び諦めないでくれたことで、ふたりの想いが繋がった

なら、翔くんが諦めようとしなければ
俺が自分の気持ちに気付く事はなく
ふたりは永遠に結ばれなかったんだろうか…

いや…きっといつかは結ばれていた

翔くんの事を好きな気持ちは
俺の心の奥底にずっとあったんだから

俺が鈍感だったばかりに時間をかけ過ぎてしまっただけ

だからやっぱり俺が悪い…

「翔くん」

「ん?」

翔くんを呼ぶと埋めていた顔を上に向けた

「俺…翔くんの事、めちゃめちゃ大切にする」

過ぎてしまった時間の分も、翔くんの事を大切にしたい

一瞬目を見開いた翔くんがフワッと花開くように笑った

「うん…俺も…めちゃめちゃ大切にする…」

しあわせそうに微笑む翔くんと、誓いのキスをした

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