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Memory of Night

第8章 花火


 あの時、ベッドの上で体を起こしていた志穂の姿は、あまりに頼りなげだった。

 小柄すぎる体や、骨の形が浮き彫りになりそうなほど痩せた手足、か細い声、儚げに微笑を浮かべるその顔さえも。

 全てが脆い。

 ほんの少し寄りかかっただけで、折れてしまいそうなほど。

 晃は宵の、誰にも弱みを見せたがらない頑なな態度を思い出した。

 あれはきっと、志穂と暮らしていた時の癖だ。


「痛いとか、辛いとか、しんどいとか、ずっと言えずに暮らしてきたのか、君は。あの人の負担にならないように、ずっと自分の気持ちを抑えてきたんだな」


 顔は伏せたまま。

 だが、握りしめた宵の手は小刻みに震えていて、自分の出した結論はやはり当たっているのだと悟った。


「だけど、そんなの辛くないか? 胸の奥が苦しくならないか?」


 行き場のない、押し込めたままの感情は、一体いつ解放されるのだろう?


「宵!」


 とっさに、名前を呼ぶ。

 はっとした宵が顔を上げる前に、晃は宵の腕を引き寄せ細い体を抱きしめていた。

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