テキストサイズ

Memory of Night

第7章 夏祭


 巾着を見つけ戻ると、そこには先ほどの少女からヨーヨーを受け取り「ありがと」と言って微笑む宵の姿があった。

 その顔はとても自然なもので、晃の前では決してしない表情(かお)だ。

 晃には、それが新鮮だった。その顔を見られただけで、無理をしてでもここに連れてきた価値があるのではないかと思うくらい、新鮮でわくわくした。


(変だな)


 そんなふうに感じてしまう自分がなんだかおかしかった。


「……見すぎ」


 横目で晃の様子を窺いながら、宵が言う。


「君があんまり綺麗だから」


 わざと気取った笑みを浮かべ、歯の浮くようなセリフを言ってみた。

 案の定、宵の瞳が鋭さを増した。


(……やっぱ、俺といる時の宵ってこうだよな)


 ゾクゾクするようなその瞳も嫌いではないけれど。

 だがこれ以上ご機嫌を損ねられても困るので、宵をからかうのはやめにして話題を変えた。


「実は、宵にプレゼントがあるんだ」


 すでにそっぽを向いてしまっていた宵に向かって言う。

 振り返った宵に見せると驚いたように目を見開いた。

 それは、蝶を形づくった赤い髪飾りだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ