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Memory of Night

第7章 夏祭


「そのゆかたに合うかなって思ってさ」

「どうせ今日だけしか着ねーんだから、そんなの貰ったってしょうがねーだろ?」


 たった一回きりの、しかも女装の為にそんなものを買ってくるなんて。

 髪飾りは細部まで細かく金の糸で蝶の羽の模様が刺繍されていて、結構高価な物のような気がするのに。

 宵はそう思ったが、晃は首を振った。


「だからだよ。いい記念になるだろ?」


 そう言うなり、宵の返事も待たずに髪飾りを着けようとする。

 膝立ちになり、結わえてある宵の髪に挿した。


「うん、いい感じ」


 そんなことを言われても、髪飾りをつけた自分の姿を確かめることはできない。

 宵はなんて言ったらいいのかわからず晃を見たが、晃はいつものように笑みを浮かべただけだった。

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