テキストサイズ

Memory of Night

第7章 夏祭


「……何?」


 さっきのポカンとした顔ではなく、お宝鑑定でもしているような顔で見つめられ、宵がいぶかしげに眉をひそめる。

 すると、突然少女はにっこり微笑んだ。


「やっぱりお兄ちゃんだぁ……」

「え……」


 驚く二人をよそに、少女は宵の両手をギュッと握った。


「お兄ちゃん、今度一緒に遊んでねー!」


 そう言うなり、着物をはためかせながら母親のもとにかけていってしまった。

 マイペースすぎる少女の言動と行動に、一体なんだったのかと宵と晃は顔を見合わせる。


「まさかあんな小さい子に女装を見破られるとはね」


 ふいに晃が苦笑して言った。


「相手してだって。いくらでするの? 三百円くらい?」

「するわけねーだろ」


 ぶぜんとして答えると、隣に晃が腰を下ろしてきた。


「知り合いじゃないんだろ? ずいぶん懐かれてんじゃん」

「……おまえに着せられたゆかたのせいで寄ってきたんだよ」


 不機嫌そうに言う宵に、晃が再び苦笑する。

 それから宵の先ほどの表情を思い出し、どこかわくわくするような、不思議な気分になった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ