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Memory of Night

第7章 夏祭


「ううん、違うよ。このお姉さんは俺のコイビト」

「ああ!? おまえ何勝手なこと……!」


 ガバッと木に預けていた体を起こそうとした宵の口を、晃が容赦なく塞ぐ。


「う……んーッ!」

「どう? 美人でしょ?」

「うん!」


 少女が瞳を輝かせながら大きく頷いてみせる。

 それから宵を見て、「でも……」とつけ加えた。

 何かを見定めるように、じーっと宵を見つめる。

 その時、人混みの中からひときわ目立つ声が聞こえた。

 晃が宵の口元から手を話し、声のした方に視線を向ける。


「あすかー! どこなの!? あすかー!!」


 若い女性の声だ。

 すかさず二人の目の前にいる少女が反応する。


「ママだ……」


 キョロキョロと人混みの中を見渡す少女の視線の先を追うと、屋台のものらしい袋を下げた女性が、同じように辺りをキョロキョロ見渡しながら呼びかけていた。


「探してるみたいだね」

「おまえ、行った方がいいんじゃねーの?」


 二人の言葉に少女は頷いたが、なかなか宵から目を離そうとはしなかった。

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