テキストサイズ

Memory of Night

第7章 夏祭


 シャワーを浴び終え、用意されていたタオルで髪を拭きながら戻った宵を、晃はドライヤーを持って出迎えた。


「髪乾かしてやるからおいで」


 宵を促す。どこかうさんくさい笑顔で手招きされ、宵は一瞬たじろいだ。


「何もしないよ」


 そう付け加えて、晃は宵を畳の上に座らせた。

 膝をつき、宵の髪を乾かす。タオルを取り、髪を掴んでドライヤーの暖かい風を当てた。


(絹みたいな髪だな)


 細くて柔らかい。

 風を当てながら櫛をいれると、よく通った。


(手入れなんか、ろくにしてなさそうなのに)


 そんなことを考え、晃が口元を緩めて苦笑していると、ふいに宵が振り返った。

 晃の手の中で軽く握られていた髪が、途端にはらりと落ちる。


「動いちゃダメだろ」

「もう……いいよ」


 宵が晃を見上げて言う。髪を触られたままじっとしているのがいたたまれないのか、その場から腰を上げようと立ち上がった。


「もう十分だろ」

「そうだな」


 少々残念そうな顔で頷き、晃がドライヤーをしまう。

 そうして広げてあった着物に手を伸ばした。


「それじゃ、いよいよお着替えってことで!」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ