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Memory of Night

第7章 夏祭


(……俺は晃のモルモットじゃねーっての)


 自然とため息が洩れた。

 部屋を出てから数分で、晃は戻ってきた。

 手には麦茶の入ったコップを二つ乗せた、お洒落なお盆を持って。

 それを飲みながら、晃は宵にシャワーを浴びることを提案した。

 外は暑いし、汗もずいぶんとかいている。

 晃の家の物を借りるわけだし、確かに体は清潔にしておいた方がいいだろう。

 浴室の場所は一度使ったことがあるのでわかっている。


「ありがと」

「あ、そうだ。待って、宵」


 礼を言って部屋から出ようとすると、寸前のところで晃に呼び止められた。

 襖に手を掛け、怪訝な顔で振り返る。


「あのさ、できれば女言葉っていうか……もう少しやわらかい言葉遣い練習しておいてくれない?」

「は? やだよ、きもい!」


 目を細め、あからさまに嫌そうな顔で晃の言葉をばっさり切り捨てると、そのまま部屋を出ていってしまった。


(……やっぱり)


 晃は閉められた襖を見つめ、盛大にため息をつく。

 宵の性格的に、予想していた答えではあったのだった。

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