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Memory of Night

第7章 夏祭


 楽しげな晃とは対称的に、宵はうんざりした顔をしている。

 晃はそんな宵を諭すように言った。


「ピンクでフリフリのアマロリドレス着せられるよりはましだろ? ほら、さっさと腕通して」

「アマロリって……」


 比べる基準がおかしすぎる。なぜに女装を前提とするのか。

 つけたい文句は山ほどあったが、着物を着る、というのは一応約束だったし、シャワーまで貸してもらったのだから腹をくくるしかない。

 晃は着物を広げて宵を待っていた。宵はおそるおそる、着物のそでに腕を通した。


「色合いぴったりじゃん」


 軽く前を掛け合わせて、晃感嘆の表情で言う。

 それから片眉をつり上げ、


「でも服邪魔だな。胸元から見えちゃうし。やっぱそのノースリーブも脱いで」

「な……!?」


 驚いて、反抗しようとする宵の口を手の平で塞ぐ。


「ごちゃごちゃ言わずに。時間なくなるだろ?」


 有無を言わせず晃が言う。

 宵は不満げな顔をしながらも着物から腕を抜き、着ていた服を脱ぎ捨てた。

 露になった肌は透けるように白い。夏だというのに焼けた様子はまったくなかった。

 宵は焼けにくい体質なのだろうか。

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