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ぜんぶ俺の物〜ケダモノ弟の危険な独占欲〜

第1章 1



「なんなら車で送るけど?」
「大丈夫」
亜貴はふーんと相づちを打つとさっさと歩きだした。
「ねえ、本当にうちに来るの?」
「行くよ。手つないでく?」
ふざけないでと差し出された手をはたいても、亜貴はまったく動じない。涼しい顔で隣を歩くだけ。
「だれも俺たちが姉弟だなんて思いやしないよ」
「ご近所さんならすぐに分かるでしょ」
「ふーん。じゃあ、遠方なら良いってことか」
冗談なのか本気なのか、亜貴は思わせぶりに呟いた。
「そ、そうじゃなくて」
「それとも、人目につかない所なら、姉ちゃんを抱きしめても良いってことかな」
「変な冗談はやめて」
亜貴がおかしい。間違っても白昼の屋外でこんなことを言う奴じゃなかったのに。
背後から来た自転車が、私たちを煽るように横切っていく。危ないと亜貴が距離を詰める。肩が触れて、指が触れる。亜貴の指先は、異常に熱く感じた。
「冗談ならね……」
亜貴がつぶやきながら、私の手を握った。慌てて振り切ったら、またすぐに握られた。それを何度か繰り返したのち、とうとう亜貴のしつこさに根負けしてしまった。
亜貴の手は汗ばんでいた。
梅雨が明けたばかりで湿度が高いせいか、うっすら湿った亜貴の体温は、私の素肌にまでまとわりつく。その感触は、否が応にも十代のあの夜を思い出させた。

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