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ぜんぶ俺の物〜ケダモノ弟の危険な独占欲〜

第1章 1


「ちょっと律、そんなに食べて大丈夫なの? 瑛人くんがおなかを空かして待ってるんじゃないの」
「ん~大丈夫、今日も残業だから。それに、夕飯もちゃんと作るし」
ふうん、と亜貴が低い声でうなった。私は聞こえなかったふりをして、ひたすらフォークにパスタを巻き付けていた。
「でも、一人で食べさせたらかわいそうでしょう」
「一緒に食べるから大丈夫」
あらま、と母は瓶ビールを片手に目を据わらせた。
「太って瑛人くんに嫌われても知らないよ」
「大丈夫ですよー」
母とのやり取りをきいていた亜貴が、ぶしつけにため息を漏らした。自意識過剰かもしれないけど、私にはそれが、俺の前でのろけるなよというメッセージに思えてしまう。
「あ、#月__つき__#は戻ってきてないんだ?」
咄嗟に末の弟の名前を持ち出して話題を変えてみる。
「月なら要領良く色々やってるみたいよ」
「ふうん」
「ようやく月が自立したと思ったら、今度は亜貴が戻ってくるって言うじゃない? まったく、母さんも暇じゃないのよ」
「あ、そうだね。ははは」
それはそれで微妙な空気になってしまった。母はビールの入ったコップを片手に頬づえをつくと、亜貴の名前を呼ぶ。
「あんたも早く良い人をみつけなさいよ。そのうち月に先を越されるわよ」
「いいんだよ俺は」
「あら、恋愛に興味ないの?」
もくもくと動かしていた箸先が一瞬だけ止まった。
「好きな人ならいるけど、片想いだし」
「あらあらあら」
途端に母の目が輝きだした。その隣で、私はキノコパスタを吹き出しそうになっていた。

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