ぜんぶ俺の物〜ケダモノ弟の危険な独占欲〜
第1章 1
「かんなちゃん、ママ迎えに来てくれたよー」
それは何の変哲もない月曜日の午後のことだった。
保育補助になって一カ月。子供たちとのおゆうぎも、ようやく板についてきた頃だった。
「はーい」
呼び声に応答して、きりん組から髪を二つにくくった女の子が元気よく飛び出し、私の脚に抱きついてきた。
午後に入り、年長組は自由時間。担当の先生方が事務作業に追われる時間帯でもあり、保護者のお迎え対応は私の仕事だった。
「それじゃかんなちゃん、またね」
「うん。りつせんせーばいばい」
その日のかんなちゃんは、ばいばいと言いながら、なぜか私にべったりだった。
「ほら、帰るわよ」
かんなちゃんのお母さんはあいさつもそこそこに、強引に私からかんなちゃんを引き離した。
「やだ、いたい!」
「何が痛いのよ、もういい加減にしなさい!」
色々な言葉を覚えてくる年頃。ちょうどかんなちゃんも第二反抗期が始まっているようで、プイと顔をそむけると、お母さんの手を振り払って走り出してしまった。
「あっ、かんな、待ちなさい!」
「やだ! ママなんかきらい!」
慌てて私とお母さんで後を追うが、子供たちのかけまわる園内では、なかなか先に進めない。
かんなちゃんは一目散に出入り口まで走っていく。
「かんな!! だめっ、待ちなさい!!」
「大丈夫です、お母さん落ち着いてください」
園のすぐ手前には線路があって、車の通りも多い。だから万が一の事態が起こらないよう、出入り口は大人しか開けられない二重扉になっている。
子供が一人では出られない構造になっているから大丈夫。
保育初心者の私は、完全に油断していた。
今日に限って、ちょうどお迎えのお母さんが入ってくるところで扉が開いていたのだ。
かんなちゃんはその脇をすり抜けるように一つめの扉をくぐり出ると、クルリと後ろを振り返ってあっかんべーをした。
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