ぜんぶ俺の物〜ケダモノ弟の危険な独占欲〜
第1章 1
「かんな!!」
かんなちゃんを守ってくれる扉はあと一つ。
追い打ちをかけるように、電車の通過を知らせる警告音が、かんかんかんと鳴り始める。
「かんな、かんな、待ちなさい!」
お母さんが声を張り上げたその時、タイミングが悪くお迎えの保護者が入ってきて、最後の扉が開いてしまった。文字通り、血の気が引いた。園児たちをかきわけ、無我夢中でかんなちゃんを呼ぶけど、追いつかない。
かんなちゃんは道路の方へ駆けだしていく。時を同じくして、踏切の向こう側から車が走り込むのがみえた。
「かんな!!」
「かんなちゃん!!」
ようやく私たちも車道へ飛び出した頃、車は走り去った後だった。かんなちゃんは、道路の脇で男性に抱きしめられるようにして倒れ込んでいた。
「ママ……ママあ~」
お母さんは一目散にかんなちゃんの元に駆け寄ると、抱きしめながら泣き崩れた。
「もう、何してるの! 飛び出しちゃだめだって、あれほど言ってるでしょう! かんながいなくなったらママ……」
私も全身の力が抜け、その場に座り込んでいた。
もし、両者のタイミングがあと少しずれていたら。
もし、男性が助けてくれていなかったら。
かんなちゃんは、どうなっていただろう。
「すみません、私の監督不行き届きでした。大切なお子様を危険な目に遭わせてしまって申し訳ありません」
そう頭を下げることしかできなかった。
「いえ、違うんです。私が……私が悪いんです」
お母さんはかんなちゃんを抱きしめながら、ずっとそう言っていた。
とにかく、無事でよかった。この男性が、咄嗟の機転でかんなちゃんを助けてくれたのだ。
男性は投げ出されたリュックを持ち上げ、片方の腕に手を添えながら立ち上がる。見るからに若い青年だった。
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