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イジワルな彼女。

第10章 翼-ツバサ-


ベランダに干してあったタオルを掴むと、
僕は濡れた顔と手を拭きながら
リビングへと帰還した。

ペットボトルのベタつきも拭き取り、
リビングのテーブル上に置こうとすると

「はぁー笑い死ぬ!」

亮太がそう言いながら、
僕からペットボトルを奪って飲みだした。

「まだ炭酸きいてんじゃん」

亮太は満足そうな顔をしている。

「…つまり、まだまだ
捨てたもんじゃないってことか?」

「イエース!さすが悠くーん」

いつものドヤ顔で亮太は答えた。
きっと僕の顔にも、
満更ではない様子が滲み出ていただろう。


「いやー、青春だねー?」

「そうか?」

「毎日毎日お勉強かと思いきや、
ちゃっかり恋とかしちゃってさー」

「…うっせ」

「俺も会いてーなー!」

「会えるもんならな」

「でも、手掛かりはコーヒーのみと」

「行きつけの店にも全然来てないらしい」

「他に行きそうな場所とかねーかな?」

「全然わからない…」

「あ!さつきに聞いてみんのは?
俺らよりか、何かわかんじゃね!?」

確かに年齢は違っても、同性の原の方が
唯さんの感覚には近いかもしれない。

「…」

「さつきにはバレないように
聞いてみっから、そんな心配すんなって!」

やはり亮太には、
僕の気持ちが全てお見通しのようだ。

「…何か、ありがとな」

照れくささに耐えられくなり、
僕は手を洗いに洗面所へ向かいながら
そう亮太に声を掛けた。

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