
イジワルな彼女。
第9章 縁-エニシ-
ベッドに仰向けになると、僕は天を仰ぐ。
唯さんが元カレに絡まれたあの日…
一体、唯さんはどこから来てどこへ向かう
予定だったのだろうか。
僕の地元は駅から離れると
マンションが建ち並ぶ住宅街だ。
…もしかしたら唯さんも、
この辺りに住んでいるのかもしれない。
しかし毎日のように通るあの道で
僕が唯さんを見掛けたのは、
あの雨の日の一度だけだ。
「…」
考えれば考えるほど、謎が深まるばかりで
僕はタオルケットを頭まで被り
無理やり眠りに就くことにした。
その夜、唯さんの夢をみた。
夢の中の唯さんは、あの日と同じく
元カレに絡まれていた。
そこへ僕が現れる。だが唯さんは
先に声を掛けたあの男性に助けられ、
2人は僕の横を通り過ぎていく。
唯さんは僕に気付かず、僕も
唯さんを呼び止めることは出来なかった。
すれ違い様に見えた唯さんの横顔は
ただただ綺麗で…
改めて僕には手の届かない存在だと感じた。
