
イジワルな彼女。
第8章 絆-キズナ-
「受験が終わってからでも
もちろん、勉強の合間にでも…
いつでもお店に来ていいからね!」
アイスコーヒーを飲みながら、
大野さんはそう声を掛けてくれた。
「ありがとうございます」
僕は大野さんの優しさに心から感謝した。
それから少し談笑して、お店を出た。
「ご馳走になってすみません…」
「いいからいいから!」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
いつもの横断歩道まで歩いたところで
「それじゃあ、私こっちだから…ここで」
大野さんは左手をまっすぐ指差した。
「あ、そうなんですか」
「いつもこっちなんだけど今日はカ…
と、友達のところから来たから」
「そうだったんですね」
「それで、チャージ足りなくなっちゃった」
大野さんは苦笑いをする。
「でも、そのお陰で会えてよかったです」
僕は反対に微笑んだ。
「ふふ。それならよかった」
大野さんも笑った。
「じゃあ、またね」
「はい!」
僕は会釈をして、
大野さんの背中を見送った。
横断歩道の信号は、赤だ。
何となく大野さんの向かった方向へ
目を向けると、ちょうど地下鉄の階段を
降りていくのが見えた。
「!」
僕はハッとした。
喫茶店の最寄り駅は2つある。
普段は地下鉄の駅をほぼ使わないため、
僕はすっかり忘れていた。
そして何より…
地下鉄の駅の方が喫茶店に近いのだ。
僕は立ち尽くし、1つ信号を見送る。
次に信号が青になると、ようやく歩き出し
そのまま帰路についた。
